過酷な労働環境で離職率が高いとされる医療現場の仕事。
その中で小原病院は、自身の生活を大切にしながら働ける環境を整え、職員は育児や勉学、
趣味にしっかり時間を取りながら生き生きと働いています。
ここ5年間で新卒者の離職ゼロを実現しています。
取り組みのポイント
★ 短時間勤務制度および日勤のみの看護師の採用
★ 資格取得のため通学しながら働ける短時間勤務制度の整備
★ 余裕のある人員配置の実施
24時間対応の院内保育所。一時保育にも対応しています。
開設当初から保育所を整備
小原病院は、近接する神戸大学医学部附属病院などの基幹病院との関わりが深く、事故や重篤な病気などで
基幹病院に運ばれ人工呼吸器を付けざるを得なくなった患者の引き受け先としての役割を果たしています。
全病床のうち7割以上をこうした患者が占めるほか、急性期から慢性期まで多様な患者を受け入れています。
同病院では開設当初から保育所を設置し、看護師が子育てをしながら働き続けられる環境を整えていきました。
現在は看護師以外の職種でも預けられるようにし、夜勤にも対応。1日700円の利用料で7人の職員が利用しています。
日曜や祝休日、夏休み等には小学校高学年の子どもについても一時保育として利用できるようにしています。
寮も開設当初から整備。
現在は看護師をはじめ、看護助手、事務職、臨床工学技士、管理栄養士が入居できる寮のほか、家族寮もあります。
5年前には新たに20人が入居できる看護師寮を建てました。
「より優秀な、より多くの専門職を全国から確保するため」と事務長の甘利茂夫さんは説明します。
また、職員にも一人一人の健康を気遣ったメニューの食事を提供。
健診結果に基づいた糖尿病食や高血圧食なども用意されています。
ストレスのない職場を目指して余裕のある看護師配置。
業務を洗い出しシフトを見直し
もともと働きやすい環境だった同病院ですが、5年前に現看護部長の谷村美保さんが赴任してから、さらに取り組みが加速しました。
それぞれの時間帯で看護職がどのような業務をしているのかを洗い出し、シフト体制を3回にわたって検討。
その結果、業務の集中度合いによって人員配置の厚みを変え、業務負担の見直しを図りました。
併せて短時間勤務制度を活用。同制度を利用する人は1週間の勤務時間の合計が30時間以上であれば、
1日の勤務時間は自由に選ぶことができます。例えば、月曜から金曜は6時間、土曜は4時間といった具合です。
看護師の有給休暇取得率は98%、病院全体でも90%に上り、もはや取得するのが当たり前に。
同病院の規模であれば、看護師の配置基準は患者さん10人に対して1人と定められていますが、
同病院は7人に対して1人と、看護師が余裕を持って患者さんと向き合える体制を整えています。
また、甘利さんと谷村さんの2人がメンタルヘルスの資格を取得して職員の心のケアに当たっています。
その他、定年後再雇用制度も設け、健康な限り経験とスキルを生かして活躍できる職場です。
職員のスキルアップのため院内・院外研修、研究活動を推奨しています。
若手看護師に広がる学びの風土
谷村さんには医療経営学を学びたいというかねてからの目標があり、同じように率先して学びたいという人が
働きやすい環境づくりを進めてきました。自身も現在、大阪市立大学大学院の経営学研究科で学んでおり、
週4日は大学院で研究してから姫路の自宅に戻る生活を続けています。
「自分のやりたいことができる環境で、仕事も勉強も楽しんでいます」
このようなリーダーの背中を見て病院全体に学びの機運が広がりつつあります。同病院では職員が無料で
外部研修に行けるよう補助をしており、担当業務のスキルアップのために多くの職員が積極的に学びに出ています。
仕事と勉強が両立できる職場であることは、ここ5年間、新卒で採用した看護師の離職がゼロという数字が物語っています。
職員と面談する甘利さん。いつでも耳を傾けてケアをしています。
PROFILE
▶事業内容医療機関
▶設立1970年4月
▶代表者奥野 邦男
▶従業員数182人(男性30人、女性152人)
▶所在地神戸市兵庫区荒田町1-9-19
http://www.ohara-hospital.jp/
平成28年度表彰企業