中播磨・西播磨の魅力

姫路城が観光の起爆剤に

 中播磨・西播磨は兵庫県の西部に位置し、中播磨地域の姫路市、神河町、市川町、福崎町(1 市3町)、西播磨地域の相生市、たつの市、赤穂市、宍粟市、太子町、上郡町、佐用町(4市3町)を合わせた計5市6町で構成されています。

 世界文化遺産の姫路城が平成の大修理を終え2015年3月にグランドオープンして以来多くの観光客を集めています。2019年度の入場者数は154万8千人で、そのうち外国人観光客は39万5千人と25.5%を占めています。旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」が発表した「旅好きが選ぶ!日本の城ランキング2019」でも姫路城が4年連続の1位に選ばれました。

 生野銀山(現朝来市)と飾磨津(現姫路港)間約49㎞を結んでいた「銀の馬車道」は日本で初めて「舗装」という概念が取り入れられ、当時最先端の技術を用いて整備された道路です。道路幅は馬車などの車両がすれ違える3間3尺(6m)以上が確保された日本初の高速産業道路といわれています。完成後は機械化を進める生野銀山で使う大量の資材や銀などが運ばれ、沿線は大いににぎわいました。現在は県道や国道に姿を変えていますが、「馬車道修築碑」「橋」「道標」などに繁栄の名残をとどめています。2017年4月には、「銀の馬車道」からさらに神子畑鉱山、明延鉱山、中瀬鉱山と北に続く「鉱石の道」を結ぶストーリー「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」が文化庁により日本遺産に認定されました。今後はますます、国内外から多くの観光客の来訪が期待されています。


厚みのある地場産業の集積

 豊かな歴史を持つ当エリアには、古くから様々な産業が根付いてきました。全国シェア約7割を誇る成牛革もその一つ。弥生時代後期に大陸からの帰化人が技術を伝え、その後、江戸中期に大いに発展しました。姫路市、たつの市、太子町の業者によって製造されたなめし革は、高級皮革製品に使われています。

 手延素麺は約600年の伝統を誇り、明治27年には兵庫県手延素麵協同組合によって統一規格が設けられ、格付け等級として「揖保乃糸」という組合ブランドが誕生しました。戦後に入っても組合が厳しい品質管理を重視したことや、揖保乃糸資料館「そうめんの里」を通じた情報発信により消費者にブランド価値が高く評価されており、近年は米国をはじめ輸出も増えています。このほかにも千葉県、香川県とともに全国三大産地の一つに数えられている龍野の醤油、国内生産の約8割のシェアを占める姫路のマッチ、全国生産高の約6割を誇る姫路市の鎖製造業など多様な集積があります。

 日本初のゴルフクラブ生産地も当エリアでした。日本製のクラブの製造が始まったのは昭和初期のことで、廣野ゴルフ倶楽部よりアイアンクラブのヘッドの研究依頼が三木市内の金物工業試験場に舞い込んだことをきっかけに当時の担当者が研究を始め、その後姫路で製造を始めたといわれています。現在も市川町を中心に業者が集積しています。

 西播磨管内では130以上ある山城(山などを利用して築かれた城)をはじめとする史跡や歴史遺産を活用し、元気高齢者やインバウンド向けの山城歴史絵巻ツアーやモデルコースの開発、現存しない山城のAR(拡張現実)アプリ「西播磨の山城へGO」の制作、山城の眺望や登山道の整備、観光ガイドの養成などを展開する「山城復活プロジェクト」に取り組み、観光客の誘致を図っています。 

 北部は県下有数の森林地帯であり、宍粟市は県内一の木材生産量を誇ります。県産木材を使って建てられた施設や住宅も増えつつあります。また、中国山地を源とする揖保川、千種川が播磨灘に注ぎ、森林がもたらすミネラルを餌にして育った豊富なプランクトンが播磨灘を豊かな漁場にしています。播磨灘を代表する海産物の一つが牡蠣。短期間でぷりぷりに育つ牡蠣は「播磨のカキ」として全国に流通していきます。南部の赤穂市では、「日本第一」の塩を産したまち播州赤穂の、塩づくりの歴史と文化が、2019年5月に、日本遺産に認定されました。伝統的な「流下式塩田(枝条架)」を復元した「塩の国」では、かん水を使った昔ながらの塩づくり体験ができます。


世界最先端の研究施設も

 臨海部は播磨臨海工業地域として早くから鉄鋼、造船、電気機械をはじめ化学工業、一般機械器具等の製造・加工、さらには皮革製造や食品製造等の多くの地場関連産業が発展し、集まっています。そしてこれらの大企業を支える中小企業群から精密金属加工、鋳造業をはじめ数々のオンリーワン企業が育っています。

 また西播磨には世界に誇る研究施設があります。SPring-8は、播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設です。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。この放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。SPring-8を含む播磨科学公園都市には県立粒子線医療センター(たつの市)が陽子線と重粒子線の両方でがん治療が行える世界初の施設として開設され、国内屈指の治療実績を誇っています。また、兵庫県立大学理学部(上郡町)、兵庫県立大学附属中学校・高等学校(同)などの文教施設のほか工場用地もそろっており、知と研究、ものづくりが一体となったまちづくりが進められています。


『高校生のための企業研究ガイド2021 兵庫の企業 中播磨・西播磨版』(神戸新聞社、2021年)




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