丹波の魅力

美しく懐かしい山里が育む丹波ブランド

 丹波は、兵庫県の中央東部に位置する丹波篠山市と丹波市からなり、北東では京都府と接しています。山々に囲まれた盆地にひろがる川筋、農地、集落などの要素が絶妙なバランスを保って調和している山里風景が特徴で、美しく懐かしいその姿は日本の原風景と言われています。

  こうした盆地状の地形により、年間を通じて昼夜間の寒暖差が大きく、秋から冬にかけて発生する「丹波霧」は豊かな森を幻想的に覆います。丹波地域には、このような気候風土と豊かな土壌に育まれた特産物が数多くあり、丹波ブランドとして全国に知れ渡っています。その代表格が「丹波黒大豆」。外観は球形で大粒、口当たりは滑らかで、もちもちと粘り気があり、甘みも強いのが特徴です。このほかにも、江戸時代から特産として栽培され肉質が緻密で非常に粘り気が強い「丹波山の芋」、強い香りとしっかりとした食感を持つ「丹波のマツタケ」、大粒で煮崩れせず色合いと風味に優れ高級和菓子などに使われている「丹波大納言小豆」、粒が非常に大きく上品な甘みを持つ「丹波栗」、と枚挙にいとまがありません。

 近年は、農業の担い手が高齢化しつつありますが、兵庫県では、丹波の特産物の生産拡大に向けたスマート農業の推進や6次産業化、農商工連携等による丹波ブランドの強化、新規就農者や集落営農組織等、多様な担い手の確保に取り組んでいます。丹波ブランドは、新規就農者にとっても大きな魅力になっています。

 

地域に息づく遺産と新たな魅力

 篠山城の城下町として栄えた伝統文化や時代ごとの風土や生活を唄に読み込んだデカンショ節の世界が現代に息づいていることが評価され、「丹波篠山 デカンショ節 民謡に乗せて歌い継ぐふるさとの記憶」は文化庁の日本遺産に認定されました。

 また、発祥が平安時代末期までさかのぼり、日本六古窯の一つとして知られる丹波焼は、登り窯と蹴りロクロ(左回転ロクロ)とともに伝統技術を今に受け継ぎ、現在も約6 0軒の窯元が丹波焼を生産しています。デカンショ節に続き、六古窯の他の産地とともに「きっと恋する六古窯 日本生まれ日本育ちのやきもの産地」として日本遺産に認定されました。

 また近年、「恐竜が生きた森」という一面が、丹波地域の新たな魅力として加わりました。2006年8月、約1億1千万年前の地層篠山層群から、国内最大級の植物食恐竜「丹波竜」が発見されました。その後も他の恐竜やほ乳類化石などの発見が続き、2020年5月には世界最小の恐竜卵と考えられる化石が発見・ギネス世界記録に認定されました。丹波地域の歴史と文化に、「恐竜が生きた大地で暮らす」という新たな個性が加わり、地域の魅力が一段と高まっています。

 

地域で生まれる多くの“すぐれもの”

 自然や農産物、地域資源の他にも、優れた技術で産業界や地域の活性化に貢献している製品や、地域の特徴を生かした独創的で優れた品質の食料品を製造している企業が数多くあります。地域の将来を担う若者や内外の多くの方々に、こうした製商品等を知ってもらうため、兵庫県では「丹波すぐれもの大賞」として顕彰しています。受賞製商品には、その後、全県・全国レベルで表彰されたり、テレビやラジオなどのメディアに取り上げられるなど、さらに発展を遂げているものもあります。

 

都会に近いオシャレな田舎~地域の魅力が移住者を呼び込む

 豊かな自然と昔ながらの農村風景や城下町の町並みが残された丹波地域は、神戸・阪神間から車・鉄道で約1時間半の圏域にあり、都会に住む人をひきつけています。休日に遊びに行く場所というだけではなく、丹波の魅力にひかれた若い人たちが移り住み、古民家を改装したカフェをオープンしたり、空き家に居住して農業を始めたりするなど、「丹波らしさ」に価値を求めて移住する人も増えています。

 これからのポストコロナ時代においては、阪神間から近く、人口密集が少ない豊かな自然環境に恵まれた丹波地域は、住環境・就業環境としての魅力がさらに高まっていくものと期待されています。


『高校生のための企業研究ガイド2021 兵庫県の企業 丹波版』(神戸新聞社、2021年)

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