淡路の魅力

国生みの神話、日本遺産に

 淡路島は、洲本市、南あわじ市、淡路市の3市で構成され、北は明石海峡大橋で神戸市と、南は大鳴門橋で徳島県とつながっています。  

    日本最古の歴史書である「古事記」の冒頭、「国生み神話」の中では 、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)が天沼矛(あめのぬぼこ)で下界をかき回し、最初に生まれた島として記されています。大陸や朝鮮半島から新しい文化や技術が伝わっていく道であった瀬戸内海の東端に位置し、大和朝廷へとつなぐ中継点としての役割を果たしたであろう歴史的役割がうかがい知れます。

 2015年4月には、そのことを裏付けるかのように、南あわじ市の松帆地区で弥生時代の青銅器・銅鐸が見つかりました。発見された銅鐸の保存状態は極めて良い状態で、銅鐸を鳴らす舌(ぜつ)、そして吊り下げる紐が銅鐸とともに発見されたことは全国で初めてとなることから、歴史的な発見として話題を呼びました。

 また、2016年4月には、この松帆銅鐸を含めたストーリー『古事記』の冒頭を飾る「国生みの島・淡路」~古代国家を支えた海人(あま)の営み~”が地域の歴史的魅力や特色を通じて文化・伝統を語るものとして、文化庁によって「日本遺産」に認定され、2018年5月には、洲本市五色町出身の豪商・高田屋嘉兵衛に関係が深い北前船の寄港地となった洲本市等の文化財群が“荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜”に追加認定されました。


豊かな食文化、淡路島ブランドで発信  

  万葉集にも詠まれる海人がつくった塩は、朝廷の儀式に使われるほど重宝された、と平安時代の法令集「延喜式」には記録されています。この「延喜式」によると、淡路島は海人が生産する多くの海の幸を皇室・朝廷に献上し、「御食国(みけつくに)」としての役割を果たしたと推定されています。

 そんな食材の宝庫・淡路島は、年間を通して温暖な気候に恵まれ、日照時間の長い農業の島としても知られています。淡路島たまねぎやレタス、キャベツを中心とする野菜をはじめ、ビワやミカンなどの果物、米、カーネーションなど、多彩な農産物を生産しています。特に淡路島たまねぎは、やわらかくてみずみずしいうえ、雑味がなく糖度が高いことで知られており、全国第3位の生産量を誇る兵庫県のたまねぎの95%以上が淡路島産となっています。

 また、一般の養殖フグよりもさらに1年長く育てられた「淡路島3年とらふぐ」は、2年目の2倍近くの大きさに成長し、天然に近い良質なフグとして知られており、淡路島で生まれ、品種評価基準により選定された「淡路ビーフ」は高級品質な和牛肉として世界からも高い評価を得るなど、海産物、畜産物にも恵まれています。

 現在、こうした淡路島ブランドを組み合わせた「淡路島バーガー」や、「淡路島牛丼」「生しらす丼」「生サワラ丼」などの島グルメ、「オニオンスープ」「オニオンカレー」などの様々なたまねぎ加工品が人気を呼んでいます。

 ほかにも、淡路島には「線香」や「淡路瓦」といった伝統的な地場産業も根付いています。淡路市一宮地区を中心に、約170年の伝統技術を継承する淡路島の線香づくりは、日本一の生産高とともにその品質の高さを誇っており、日本国内最大の産地として知られています。美しいかたちと繊細な香りを表現する技術は、新しいルームフレグランスとしてフランスで注目を集め、「あわじ島の香司(こうし)」ブランドは、国内はもとより、欧米でも高い評価を得ています。

 淡路瓦は、兵庫県内で生産されている粘土瓦の約99%を占めており、南あわじ市の津井、松帆、阿万地区を中心に生産されています。現在は、質の良い粘土と独自の製法により、優雅な高級品として根強い人気を得ているいぶし瓦が主力で、生産の3分2を占めています。その独特の色合いは、和を演出する役割を果たし、屋根材だけでなく、モニュメントやオブジェなど、多様な用途に展開されています。


あわじ環境未来島構想で、新たなまちづくりのモデルを提示

 淡路島では、豊かな自然の恵みと地域コミュニティの結びつきを生かし、日本が抱える人口減少や高齢化の課題解決の先導モデルとなることを目指して「エネルギーの持続」「農と食の持続」「暮らしの持続」をテーマにした「あわじ環境未来島構想」を県・市・住民・地域団体・企業などが協働して推進しています。

 2011年には「地域活性化総合特区」に指定され、2050年までの目標として、エネルギー(電力)自給率100%、生産額ベースの食料自給率300%以上などを目標数値として掲げており、再生可能エネルギーの活用や電気自動車の普及、農業人材の育成、地域資源を生かした集落の活性化などで、生活の質を重視した新たなまちづくりのモデルを築いていこうとしています。

 1998年4月に明石海峡大橋が開通して以降、淡路島はより身近な島になりました。季節ごとに花が楽しめる「あわじ花さじき」、世界最大級の「鳴門の渦潮」、数多くの温泉など観光資源にも恵まれる淡路島。現在は、明石海峡大橋(垂水IC〜淡路IC間)の通行料金が910円に大幅値下げされ、観光客数の増加にもつながっています。



『高校生のための企業研究ガイド2021 兵庫県の企業 淡路版』(神戸新聞社、2021年)


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